理屈の上では分散投資は非常に優れている。
投資について、特に個別銘柄の選択についてうとい人は低コストのインデックスに投資するのがベターだろう。投資を大して知らなくても、平均的なリターンができるのだから。
個別銘柄を選ぶ投資家でも分散投資のが望ましいように思える。
ある1つの銘柄に集中して投資するより、同程度の魅力的な銘柄に分散して投資することができれば、期待リターンは加重平均なのでほとんど変化せずに、ボラティリティを低下させることができるからだ。
例外的に、一か八かを楽しみたいような人や、資産が一定以上増える確率だけに着目するような人たちに分散は望ましくない。
似たようなのリターンの分布を持つ銘柄に分散する場合、期待リターンは変わらないが、期待リターンより上の一定以上のリターンを達成する確率は下がってしまう。
分散投資が有利に思われるにも関わらず、
投資で富を築いた多くの投資家達が集中投資をすすめている。
簡単に言ってしまうと、無暗に分散すれば平凡な結果に近づくだけだからだ。
集中投資の方が、一定以上のリターンを達成する確率は高いのだから、
もしかすると―これはある種の生き残りバイアスなのかもしれない。
しかし、私たちにはそう簡単な問題でないように思えるので、
分散投資より集中投資がすすめられる理由をもう少し見ていくことにしたい。
1.素晴らしい投資機会はそれほど多くない
個別銘柄を選択して投資するということは、自分なら市場平均以上の望ましい投資ができると思っているのだろう。
市場平均を少し上回るぐらいの投資のチャンスなら十分に存在するかもしれない。
だが、市場平均を非常に大きく上回るような素晴らしいチャンスはどれぐらいあるだろうか?
私たちは(そしておそらく比較的少数への投資で成功した投資家達も)それほど多くないと考えている。
なにせ魅力的な投資機会がないので、現金を保有したままチャンスが来るのを何年もじっと待つという投資家も存在するぐらいだ。
繰り返しになるが、
ある1つの銘柄に集中して投資するより、同程度の魅力的な銘柄に分散して投資する方が良い。このことは多くの人にとって間違いない。
しかし、同程度の魅力的な銘柄がいつも数多くあるとは限らない。
では、数が少ない場合はどうするのだろうか?
絶対的な自信があるから、非常に魅力的な銘柄のみに絞って投資するのも良い。その自信が過剰でないならばそうすべきだろう。
いつも自信が正しければ良いが、人間は自信過剰になりやすい傾向があるし、またそこまでは自信が持てない場合もある。
少し基準を緩めた上で、投資先を少しだけ増や方が穏当な選択だろう。
しかし、いたずらに数を増やすためだけに魅力的でない資産にまでやみくもに投資することはオススメしない。魅力的な株式で構成されたポートフォリオに、まったく魅力のない株式を加えてもポートフォリオは良くならない。無節操に分散すればするほど、平均という平凡な結果に近づいていってしまう。
「広範な分散投資が必要となるのは、投資家が投資にうとい場合のみ」(『バフェットの教訓』)だ。
2,素晴らしい投資機会がたくさんあったとしても、それを見つけだして管理するのは難しい
もしかしたら、素晴らしい投資機会はたくさん存在するのかもしれない。
日本の上場企業数だけでも3,700社近くあり、世界中を探せばもっとたくさんの上場企業があるのだから、素晴らしい機会も十分にあるかもしれない。大きな資産を運用する投資家なら小規模な上場企業を相手にできないかもしれないが、大抵の個人投資家は小規模の企業にも問題なく投資できるだろう。
(2017年8月末時点で日本証券取引所グループに上場している会社数は3,560社。他に名証、福証、札証への単独上場企業もある)
しかしながら、日本の上場企業全て、ましてや世界の上場企業全てを個別に丁寧に分析して見続けることはどう考えても現実的ではない。
世界に目を向けるにしても言語の問題があるし、IT、金融、エネルギー、自動車、医薬品など―様々な企業・産業について、少なくとも市場に対して優位なレベルにまで精通しなければならないからだ。(現実に精通するのは、ITといった大きな区分ではなく、グラフィックスチップスやメモリなどのレベルだろう)
そんなことができる時間や能力を有する人間はいないだろう。
時間的な限界あるいは能力的な限界から、非常に魅力的なチャンスを多数探しだすことや、多数の株式を保有した後も監視し続けることは非常に困難だ…
どの程度の数までなら可能なのかは、一概には言えないが、個人的には20~30銘柄程度が上限ではないかと思っている。
3.まとめ:分散か集中か
ある1つの銘柄に集中して投資するより、同程度の魅力的な銘柄に分散して投資する方が望ましい。その意味で分散投資が効果があるのは間違いない。
投資に関して良くわからない―投資機会の魅力が判断できないなら―広範な分散投資をすることは決して悪いことではなく、むしろ良い選択だ。
市場平均を上回ることができる投資家なら、比較的少数の銘柄に集中投資をすべきだ。少なくとも数を増やすことだけを目的とするような無暗な分散はすべきではない。
分散すればするほど市場平均という平凡な結果に近づいてしまい、市場平均を上回ることができるせっかくの能力が台無しになってしまう。
コメントを残す